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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(オ)201号 判決 1953年5月08日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由について、

上告人等先代照雄(売主)が昭和二一年一一月中旬、被上告人佐伯市農業会外十団体(買主)と判示地下足袋売買の契約をしたこと、照雄が右売買代金の前渡として右各団体から合計金七三万一七五〇円の交付を受けたことは原判決の確定するところである。

かりに、所論のごとく右売買契約が統制法規に違反するが故に無効であり、右売買代金の前渡は、不法原因給付であるが故に、給付者からその返還を請求し得ないものであるとしても、元来民法七〇八条が不法原因のため給付をした者にその給付したものの返還を請求することを得ないとしたのは、かかる給付者の返還請求に法律上の保護を与えないというだけであつて、受領者をしてその給付を受けたものを法律上正当の原因によるものとして保留せしめる趣旨でないのであるから、受領者においてその給付を受けたものを給付者に任意返還することは勿論、当事者間において、右給付の返還を契約することは、同条の禁ずるところにあらず、又、民法九〇条に反するものでないとすることは既に、当裁判所の判例とするところである。(昭和二四年(オ)第一七九号、同二八年一月二二日言渡、第一小法廷判決)

しかして、本件においては、上告人先代照雄は、昭和二二年二月四日被上告人佐伯市農業会等と合意の上右前渡代金の返還に代えて、本件不動産その他の物件の所有権を右被上告人に移転することとし、次で右所有権移転の登記を了したものであることは又、原判決の確定するところであるから、右前渡代金の返還が前段説示のごとく民法七〇八条に反することなく有効である以上、これが返還に代えてした不動産移転の契約も亦、これを所論のごとく無効と解すべき何らの理由もないのであつて論旨はこれを採用することはできない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条を適用して、全裁判官一致の意見により主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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